コミュニケーション方略指導教材の必要性とその作成方法
(Necessity and production procedures of teaching materials based on communication strategies)

岩井 千秋(広島市立大学)
小西 廣司(松山大学)

 コミュニケーション方略(CS)の研究は、理論研究が先行し、応用研究にはまだ課題山積である。CSを教えることの是非、すなわち CS teachability については理論面(例Bialystok 1990, Yule & Tarone 1997)あるいは実証面 (D嗷nyei 1995) から議論されてはきたが、その意義について断定できるだけの根拠を示した研究者がいるとは言い難い。
 この問題の一因となっているのが、CS指導を体系的に行うのに必要な教材が実質上ほとんどないことである。Tatsukawa (2000)、Faucette (2001)、Iwai (2001) の教材分析が示すように、日本の中学校英語教科書(Iwai 2001)や高校英語教科書(Tatsukawa 2000)ではCSの考えが教科書に積極的に反映させられた痕跡は見当たらないし、ESL や EFL を対象とした主に英米の出版社の教科書(Faucette 2001)でもCS理論はほとんど採り入れられていない。
 このような状況からすると、CS teachability の検証には、研究の再現性が保障できる教材作成から着手する必要がある。と言っても、上述のように理論先行のCS研究では、「方略」という概念が論点になってきたため、具体的な言語材料(語彙や文法)とCS指導をどのように組み合わせればよいかについてほとんど言及されてこなかった。例外は辞書の定義文に注目して語彙方略に用いられる語彙や統語構造の特徴を分析した Konishi (1994, 1995a, 1995b)、またそれを実際の英語母語話者で確かめた Konishi (2001)、Konishi & Tarone (印刷中)、さらに Konishi (2001) をモデルに言語データを大量収集した Iwai (2002) が挙げられる。これらの研究は、いずれも言及物の名称を直接目標言語(英語)で知らない場合、どのような語彙、文法、あるいは意味的特徴に着目して表現するかを分析したものである。
 こうした基礎研究に基づいて、本研究の発表者たちは、実証研究に向けた準備として、CS指導教材 ENGEL (English Generative Learning) を作成した。ENGEL は学習者が段階を追って「英語名を知らない言及物を、他の表現を使って表現する練習」をコンピュータ上で自習できるようにしたCS教材である。教材を、いわゆるCALL教材としたのは、実証研究に伴う教授者要因を排除し、かつ研究の再現性を保障するためである。
この開発教材を使ってすでに実証研究は実施しているが、本研究発表では教材開発の部分にのみ焦点を絞り、その必要性と方法について述べる予定である。
(参考文献の詳細は、発表ハンドアウトにて提示。)

Back to Paper Index